2023.10.19サラダクラブに聞く、野菜廃棄物ゼロを実現する多様な取り組みとは
はっけん度
1999年、パッケージサラダの販売を開始した「カット野菜」のリーディングカンパニー、サラダクラブさん。食品ロス削減に取り組むキユーピーグループ経営方針に則り、野菜未利用部の活用も積極的に行っています。
お話をうかがったのは
※2023年8月取材。本文中の肩書は取材時のものです。
株式会社サラダクラブ 生産本部 小宮正和さん
野菜廃棄物を活用した循環型農業とは
サラダクラブは食品に携わる会社として「野菜を余すところなく使い切りたい」という想いをずっと持っていました。そこで着目したのが、「千切りキャベツ」や「ミックスサラダ」といったパッケージサラダの製造過程で発生するキャベツやレタスの外葉、芯など野菜の未利用部の活用です。
まずはサラダクラブの遠州工場で乳牛用の餌に変える「飼料化」の取り組みをスタート。飼料に適さない野菜は発酵分解装置で一次発酵、その後たい肥化することで、遠州工場から出る全ての野菜廃棄物をなくすことに成功しました。これを受け、直営7工場に発酵分解装置を導入。野菜廃棄物から作ったたい肥を契約産地へ、そのたい肥で育てられた野菜をサラダクラブへ納入してもらい、パッケージサラダを製造するという循環型農業の仕組みを構築しました。
当初はたい肥を変えることに戸惑っていた農家さんもおられましたが、今では私たちが供給するたい肥を使うと野菜の育ちが良くなると喜んでいただいています。また農家さんに安心して野菜を育ててもらえるよう、豊作の時はパッケージサラダの容量を多くするなど、産地での野菜廃棄をなくす取り組みも行っています。
食を食に還(かえ)す、未利用部のアップサイクルとは
サラダクラブが使用するキャベツの量は年間約30,000トン。日本でもトップクラスのキャベツ使用量です。外葉や芯などの未利用部は、先ほど述べたとおりたい肥や飼料として活用しているのですが、やはり「食材は人が食べるものにもう一回利用したい」という想いがあり、食品としてアップサイクルできないか模索を続けてきました。
そこで食品ロス削減に取り組む企業と協働で、パッケージサラダの製造過程で発生するキャベツの芯を使った食品開発に着手。加熱すると甘みが増すというキャベツの芯の特徴を生かし、ミネストローネやポタージュスープなどのアップサイクル食品の製造を開始しました。また家庭でも食品を無駄にしない意識を持ってもらえるよう、野菜の外葉や芯など捨ててしまいがちな部位を使ったレシピを考案し、積極的に発信しています。
さまざまな取り組みが実を結び、現在サラダクラブでは「野菜廃棄物ゼロ化」を達成することができましたが、食品ロス削減の方法はまだまだあると考えています。すでに進めているキャベツの未利用部の工業利用を含め、今後も幅広い分野の製品に廃棄物を活用する道を探っていきます。
食品ロス削減の一環となる、鮮度長持ち技術とは
サラダクラブでは、日持ちが長くなれば家庭や販売店での廃棄が少なくなる、という観点から、業界で初めて加工日から5日間鮮度を保持する「鮮度保持延長」の技術を確立しました。野菜は加工してから時間が経つと、どうしても変色をしたり、特有のにおいが発生したりします。そこで野菜の収穫から工場納入まで10℃以下に保つ低温流通管理と野菜の抵抗力を活かし、やさしく洗浄する技術で野菜へのダメージを最小限に抑制。野菜の特性に合わせて混合ガスをバランス良く充填することで、防腐剤や添加物などを使用しなくても鮮度を長く保つことに成功しました。
また野菜は呼吸をすると腐敗が進むことから、野菜の呼吸を抑えるパッケージに変更。食品ロス削減に貢献するだけでなく、より鮮度が良く、おいしい野菜をお客様にお届けすることができるようになりました。防腐剤や添加物は一切不使用なので、安心してお召し上がりいただけるのはもちろん、食べる前に水洗いをする手間もいらず、水の使用量も削減できます。
さらにサラダクラブでは包材に使うフィルムのリサイクル化にも着手。現在は3工場で進めていますが、2024年までには全7工場でフィルムのリサイクル化を図ります。またプラスチックの使用量そのものの削減にも努め、トレーを軽量化する、パッケージサラダ包材の寸法の縮小化や薄肉化するなど規格の変更も行いました。
これからは鮮度の保持だけでなく、野菜それぞれの特徴を最大限に高められるアプローチを考え、野菜を無駄なく、おいしく食べていただけるよう取り組んでいきます。
Information
- 野菜で循環する人と地球のやさしい気持ち
「想い」が巡る食品ロス対策
https://www.youtube.com/watch?v=f76jY23Ti0E
執筆:河野聡子(有限会社キーノート)
取材:明石麻穂(ロスをロスするProject)/ 河野聡子(有限会社キーノート)
撮影:鹿島祐樹(株式会社エンビジョン)/ 江戸明弘(株式会社エンビジョン)